刃物のまちだからこそ、「優れた道具」を伝えたい
今日のブログは、私、関市役所 農林課の吉田が担当いたします。
「刃物のまちなのに、どうして子どもたちはナイフを使っていないの?」
この言葉に「ハッ」とさせられ始まったこのプロジェクトには、モノづくりの枠に留まらない大きな可能性があります。
関ってどんなとこ?
関市は「日本一の刃物のまち」でドイツのゾーリンゲン(Solingen)・イギリスのシェフィールド(Sheffield)と並んで「刃物の3S(スリーエス)」とも呼ばれる刃物産地です。自然環境もとても豊かで、市内には長良川や板取川・津保川などの清流があり、周辺は四方八方を山林に囲まれた土地柄です。特に平成17年の市町村合併により山間地域が激増し、森林面積は市域の約81%もあります。
「地場産業」×「林業」
そんな「刃物のまち」は広大な森林を持つことになり、林業を抱えることになりました。林業といえば材価の下落により活気が薄れ放置される森林が全国的にも問題になるなど、林業振興課(H30年度より農林課)は地味な存在とも言われました。
そのような中で森のようちえんが全国的に注目され、市有林をフィールドに使えないかとの話が持ち上がり岐阜県立森林文化アカデミーへ相談に行ったことから、このプロジェクトが生まれました。地産地消と言うことで、morinocoナイフには間伐で不要となる関市産ヒノキ(枝)を活用していますが、地元産木材を使った刃物はなかったうえに、枝は最近でこそバイオマス発電へ利用されますが元々は山林に放置される部材です。
この枝、今まで使われてこなかっただけに何かと難しい素材ですが、乾燥・加工技術が確立できればとっても美しい素材なので、色々な製品にも応用できものと期待しています。今はメンバー自らが採取しているため材価は0円ですが、将来的には森林所有者へ材価を還元できる仕組みが構築できないか、morinocoナイフは枝に木材としての新たな価値を与える挑戦でもあります。
「刃物」と「こども」
子どもに刃物を持たせるなんて!
今の時代、こんな風潮が当たり前になっています。自分たちが子どもの頃はどうだったでしょうか?本当に刃物が悪いのでしょうか?包丁も使わない大人が増えているとも聞きますが、 morinocoナイフには森のようちえんや自然学校関係者からたくさんのお申し込みやお問い合わせがあり、「刃物は優れた道具」であるということをしっかり認識されている証かと考えています。
morinocoナイフのイベント時にも、「子どもに正しい刃物の扱い方を教えておきたい」、「しっかり刃物を扱える子になってほしい」との声をたくさんのパパ・ママさんからいただきます。
「危ないから使わせない。」のではなく、「子どもたちの意欲を大切にしたい。」と思いませんか?
「地場産業」×「林業」×「子どもたち」=morinocoナイフ
当初はALL SEKIで子ども用ナイフをつくろうと始まったこのプロジェクトは、地場産業(刃物)×森林(林業)×子どもたちを繋ぐ大きな可能性を秘めています。
この地には「刃物のまち」という土壌がありますが、残念ながら子どもたちに「刃物のまち」という誇りが薄れてきたように感じます。そのため、作り手だけでなく使い手の育成もとても重要であると考えていて、市立保育園の保育士さん達も巻き込み、みんなで削りながら話し合っています。
「削るって楽しい!」参加者はみんな言葉も発せず黙々と削っていました。「でも子どもたちに分かりやすく教えてあげるには?」議論は深まりましたが、まずは保育園へ持ち帰りお散歩など園外保育時に保育士たちで使ってみたいとの声が出てきました。
まだまだ課題はあるものの、「刃物は優れた道具」であるということをSEKIからしっかりと発信していかなければなりません。「関市らしさ」・・・morinocoナイフが担う役割はどんどん大きく広がっていきます。
筆:関市役所農林課 吉田浩之
この記事へのコメントはありません。